隠語 - 齋藤畳店
昔、畳職人の間では「隠語」と呼ばれる畳職人独自の用語があり、今で言う「スラング」的な言葉が使われていたようです。 主に畳を製作する上での専門用語や、畳の道具をモノに例えた言葉で形成されています。 畳製作は今でこそ機械化になり工場作業になりましたが、手作業を主とした昔の畳職人は、お客様宅の庭先をお借りした現場畳製作が多かった為、余計な会話をお客様に聞かれないよう、職人間での気遣いで隠語を用いて会話をしていた事も多かったようです。
例えば、長方形である畳の短辺側を「巾」と呼び、畳職人間での隠語では「女性」を意味します。 逆に畳の長手側を「長さ」と呼び、隠語では「男性」を意味します。
私が畳学校の訓練生だった20年程前、先輩の職人さんが、休憩時間中…、
- 先輩「K君、巾のサラ、刺したことあるか?」(※手縫いで畳を縫い上げる畳職人は畳を作り上げる事を刺すと言う)
- K君「巾のサラはないですね〜」
- 先輩「俺の時なんて巾縫ってる時手に針刺して血だらけだったぞ〜」
- 一同爆笑…
これを始めて聞いた幼き頃の私は、畳を縫う針で手を刺しただけの話で、何をそんなに皆な笑っているんだと、思いましたが、これをここで畳職人の隠語に直訳すると…私の人間性が疑われますので割愛させて頂きますw
まあ、今では畳作りも工場での機械作業になり隠語もまず聞かなくなりましたが、隠語と言うのは、現場でお客様に余計な気を使わせず職人間でスムーズに仕事を勧める為の粋な計らいであり、職人間でのコミュニケーションの一つだったのかと思います。
〜他、隠語例〜
●霧吹き→小便する
例)おう、ちょっくら霧吹いてくるわ!
●シミズ→畳が歪んでいる、不良
例)A「御宅の跡取り息子、最近シミズかがってきてねぇが?」B「おぅ、今度言って聞かせっから!」
※他多数は割愛
隠語を受け継ぐのも伝統の一つなのかと思う、今日この頃です…
コラム筆者・仙臺流 疊草山会 齋藤畳店 齋藤直人
畳表の原料である「イ草」を学ぶ為に、2011年より毎年熊本県にひたすら通い続ける。「畳を活かす空間創り」を胸に、表具の技術指導も受けながら広い範囲での畳の普及活動に勤めオリジナルスタイルの構築を進めている。
http://www.maruharutatami.com/
柴田郡大河原町字新南28-4
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