畳のお部屋の寸法測定 - 仙臺流 疊草山会
↑畳の部屋です。
↑畳を剥がすとこんな感じになっています。
畳は基本的に50ミリ~60ミリほど厚みがある作りになっており、その畳の厚みが耐久性、断熱性、吸放湿性、弾力性、防音性などの機能を果たしています。特にギュッと圧縮されたオール稲わらで作られた宮城県産本藁製の畳床は、難燃性も兼ね備えております。さて、畳のお部屋は、このように厚みを持たせる為、木枠で囲われており、立地や作った大工さんなど様々な個性の職人が作られるため、大きさもまちまちになります。そのためその都度お部屋の寸法を測定します。
↑ 写真の丸い機具は、文明の利器・直角レーザー測定器。現在は、お部屋の畳の割りつけの芯とする部分に印をつけ、直角十字に光を出すレーザー測定器で寸法を測る畳屋さんが多くいると思います。
↑図面におこすとこんな感じでしょうか?ぱっと見、一般の人が見ると正方形に見えるお部屋も、実際測定するとこれだけ数字が行ったり来たりしてミリ単位で歪みがあります。畳は木工のように現場で削ったりできないため、お部屋の寸法や厚みを測定し、その寸法をもとに作成しなければなりません。このようにレーザー光線や直角定規をもとに寸法測定するする採寸技法を「十字本法」と言います。ほか、同じく直角を基準にお部屋の畳を測定する採寸技法に「割本法」という技法があります。割本法は、直角定規やレーザーなどの道具を使わず、ピタゴラスの定理に基づき算出された「クセ消し率」をもとに計算して採寸します。お部屋の対角線の差を定規を使って測定し、その対角線の差の数値の差を「クセ消し率」の乗数で掛けた合計で部屋の歪みがゼロになるように部屋の歪みを割り付けるという技法です。
↑上の写真は畳の部屋の対角線が、AB地点に対し、CD地点が一寸(約3センチ)大きい場合です。寸法の割り付けを見ると、四辺すべて5尺8寸(約175.8センチ)狂いなしで割り付られているので、対角線差の一寸(約3センチ)の歪が消えず、このままでは直角を基準に畳を作成することができません。
↑こちらが対角線差を数式で消した割付図です。ACとDBのラインを対角線の大きい方へそれぞれ7分1厘4毛ずつ大小差をつけて割り付けたので歪が消えて、中心に直角レーザーを置いた時と同じ割り付けになりました。この割本法に関して初めて聞いた方はなんのこっちゃとなると思いますが、興味のある方は「草山会」の皆さんにその都度お聞きくださいw
以上のように、畳は直角を基準に作成することが多くあります。↑上図の記号の部分が直角です。お部屋の歪みは印のついていない敷居などの木枠側の部分で算出します。ほか、お部屋の歪みがひどい時は、畳を直角ベースにせず、部屋の歪みに合わせて歪ませて測定する「掛けシミズ法」という採寸技法もあります。
例えば歪の大きい部屋を、直角を基準に測定すると、↑図の左の図になります。歪の大きい部屋を「掛けシミズ法」で測定すると↑図の右側のようになり、畳も歪ませることで、畳の大きさが揃います。
↑写真は六畳間の採寸図面。この現場のお宅は対角線差が1寸2分2厘5毛(約37ミリ)ほどありました。この現場は割本法の応用で少しだけ対角線の歪を消し、残った歪を割り出して歪ませた「混合掛けシミズ法」で計測しました。
↑図の畳の角に2.4と書かれている部分が直角から2分4厘ほどひずませた割り付けとなります。
色々と説明してまいりましたが、何が言いたいかというと、通常お部屋に敷き詰める畳は作り置きをポコポコはめていくわけではないということですW 各々色々なやり方があると思いますが、こういった採寸技法を生み出し、後世に残した業界の先輩方は本当偉大だなと、つくづく感じながら、今後も精進してまいりたいと思いました。
コラム筆者・仙臺流 疊草山会 齋藤畳店 齋藤 直人
畳製作の技能は代々受け継がれ今日に至り、国内では主に関東式と関西式の二つに分かれております。そんな中宮城でひっそりと伝わってきた仙臺流。親方達が他所に負けじと磨かれてきた技。私達はそんな心意気を継承して行こうと、「仙臺流 草山会」を立ち上げ活動を始めました。
◇佐々木畳工業・佐々木 崇
宮城県加美郡加美町西町47
◇齋藤畳店・齋藤 直人
宮城県柴田郡大河原町字新南28-4
◇畳屋清兵衛・矢作 伸寿
山形県尾花沢市荻袋750
◇有限会社コニシ小西畳工店・小西 康博
宮城県仙台市泉区天神沢1丁目16-51
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